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【2016年】今年一年を振り返って/今年書いたもの

多忙にかまけて更新が疎かになっております。

この一年程のうちに頂いた御本のなかから、個人的にとくに印象深かったものをご紹介したいと思います。文庫・新書は除き、なかなか手に入りづらい?ものが中心です。

・萩原大輔『武者の覚え 戦国越中の覇者・佐々成政』(北日本新聞社、2016年7月)
・神田宏大・大石一久・小林義孝・摂河泉地域文化研究所編『戦国河内キリシタンの世界』(批評社、2016年8月)
・小川雄『徳川権力と海上軍事』(岩田書院、2016年9月)
・中山一麿編『神と仏に祈る山 美作の古刹 木山寺社史料のひらく世界』(法蔵館、2016年11月)


萩原さんの『武者の覚え』は新聞連載をもとにしたもので、手堅い内容ながら非常に読みやすい人物評伝。『戦国河内キリシタンの世界』は、版元のサイトに詳しい紹介がありますのでご参照くださればと思いますが、執筆者の方々それぞれの思いが文章から滲んでくる、そういった御本のようにお見受けしました。『徳川権力と海上軍事』は小川さんの史料博捜ぶりが十二分に堪能できる研究論文集、最後の『神と仏に祈る山』は、豊富な図版や史料紹介に研究論考も加わる贅沢な一冊です。

***

さて、今年一年で書いたもの、やったことなどのまとめ、覚書です。
以下の通り、昨年同様、宇喜多氏中心ですが、前田氏研究にも手を拡げています。
また、前田利長の発給文書の収拾作業は継続中で、どこかで機会があれば、下記の1400通程度に、さらに100通程度?を加えて文書目録補遺…といったものをまとめたいと思っておりますが、なかなか時間が許しません。もちろん、それでも全部ではありません。利長発給文書の8割程度かと思います。
それから。宇喜多氏関係でいえば、森脇崇文さんの論考「文禄四年豪姫「狐憑き」騒動の復元と考察(『岡山地方史研究』138号、2016年4月)が興味深く、また、いつもながらの精緻なお仕事ぶりが際立っていたように思います。

著書・編著書
・『前田利家・利長』(シリーズ・織豊大名の研究 第3巻)(戎光祥出版、2016年8月刊行)
 ※編著書。「総論 織豊期前田氏権力の形成と展開」および附録「前田利長発給文書目録稿」を担当。
・『論文集 宇喜多秀家の周辺』増補版(宇喜多家史談会、2016年12月刊行)
 ※昨年=2015年12月発行の同名著書(以下元版)の増補版です。単著。
 ※収録論考
  ・「樹正院の後半生」(元版から一部史料等を増補)
  ・「宇喜多孫九郎秀隆の基礎的考察」(元版から一部史料等を増補)
  ・「中村家正関係史料目録稿」(元版から一部史料等を増補)
  ・「『乙夜之書物』にみる宇喜多騒動」(新稿)
  ・「明石掃部の娘」(『宇喜多家史談会会報』59号(2016年7月)の同名拙稿に一部加筆)
  ・「明暦二年の浮田小平次」(元版から一部史料等を増補)
  ・「加賀藩前田家と八丈島宇喜多一類」(拙稿「加賀藩前田家による八丈島見継について―享保七年の事例―」『宇喜多家史談会会報』60号(2016年10月)および拙報告「十七世紀前半における加賀藩前田家と八丈島宇喜多一類」(加賀藩研究ネットワーク第22回研究例会、2016年3月27日)の内容等に大幅加筆)

<論文その他>
・「直家登場以前の宇喜多氏」(『戦国史研究』71号、2016年2月)
・「八丈島の宇喜多孫九郎」(『宇喜多家史談会会報』58号、2016年4月)
・「明石掃部の娘」(『宇喜多家史談会会報』59号、2016年7月)
・「加賀藩前田家による八丈島見継について―享保七年の事例―」(『宇喜多家史談会会報』60号、2016年10月)
・「没落後の宇喜多氏」(『岡山地方史研究』140号、2016年12月)

 ※以上の五篇いずれも史料紹介が中心。

<講演その他>
・「樹正院豪姫と宇喜多秀家」(「前田土佐守家資料館連続講座」2016年2月7日。於金沢市)
・「十七世紀前半における加賀藩前田家と八丈島宇喜多一類」(加賀藩研究ネットワーク第22回研究例会、2016年3月27日。於金沢市)

 ※その他、「宇喜多秀家☆フェス」(2016年10月9日。於岡山城天守閣前)、山陽新聞朝刊さん太タイムズ(2016年12月11日発行分)など。
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【新刊】拙編著『前田利家・利長』等について

また随分更新が滞りました。今回もかいつまんで……。

このたび、

拙編著『前田利家・利長』(シリーズ・織豊大名の研究 第3巻)戎光祥出版、2016年8月

を上梓いたしました。
執筆者の皆様をはじめご協力いただいたすべての方に、厚く御礼申し上げます。
詳しくはコチラ(戎光祥出版さんのHP)をご覧いただければと存じます。
収録論考9編はどれも基礎的かつ堅実なものばかり……、先行研究の重厚さを痛感します。
また、前田利家・利長・利政(利長弟)の三者の発給文書リストが
この一冊の中に揃いましたので、いろいろと便利な本になっていようかと思います。

ここでは、かいつまんで筆者の担当「総論 織豊期前田氏権力の形成と展開」について若干の紹介。

この論考では大名権力前田氏(利家~利長代)についての研究史整理と概説を試みましたが、
前田氏権力にとって一つの画期となった慶長4年(1599)9月以降の利長の動向には、
とくに注意を払って(紙数を費やして)新知見を示したつもりです。

端的に言えば、上方の徳川家康を中心とする豊臣公儀に対して、
表面上は忠誠・異心なき姿勢を繰り返し示した一方で、
裏面=領国内においては軍備の増強に余念なく、領国の防衛(それもかなりの程度)を
急ピッチで固めていたことを、新出の同時代史料を軸に指摘しました。

また、利長発給文書の収集をもとにその花押の分類・整理も行ったわけですが、
結論だけかいつまめば、この慶長4年という年に、利長は一旦は改めた花押を、
また元に戻してしまうことが明らかになりました。
その背景には、恐らくは上記の徳川家康との関係と考慮すべきという点も
本文中に指摘した通りですが、ただし、通説のごとき慶長4年冬の「加賀征伐」「加賀の陣」
(家康の主導による前田利長の征伐)計画といったものには、
その存在自体に疑問を呈しました(否定しました)。
論拠等、詳しくは拙稿をご確認いただければと思います。

そのほか、宇喜多氏についても何点か、前田氏と比較したり絡めたりで言及しています。
八丈島における宇喜多孫九郎(秀隆。秀家嫡男)の異常や、
大坂の陣後、加賀国の芳春院(前田利家後室)に保護された明石掃部の娘※のことなど……。
拙稿「明石掃部の娘」(『宇喜多家史談会会報』第59号、2016年7月)もあわせてご参照ください。

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【受贈御礼】『岡山県立博物館研究報告』第36号

内池英樹さんから以下の新刊冊子をご恵贈いただきました。
ここにご紹介して感謝に代えさせて頂きます。

『岡山県立博物館研究報告』第36号(2016年3月)

<目次>
・和田剛「真庭市・木山神社の新出神像について」
・重根弘和「真葛香山の虫明焼―二つの十二ヶ月茶碗」
・佐藤寛介「近代木彫の巨匠平櫛田中と人間国宝の刀匠宮入行平~親交の記録~」
・内池英樹「鈴木家文書について~戦国時代末期の新出資料~」


内池さんの史料紹介は、備中の在地領主鈴木氏に関するものですが、
いずれも鈴木氏のその時々の立場を反映していて、大変興味深く拝見しました。
16世紀後半の備中国の複雑な情勢、三村・伊賀・宇喜多といった勢力の角逐は、
こうした地道な史料調査・研究によって、今後もその理解に変化(深化)が加わっていくのだろうと思います。

***

今月末(3/27)になりますが、金沢で以下のような報告をします。
未活字/新出史料を扱うのは、なかなか難しいものです。

加賀藩研究ネットワーク第22回研究例会
報告「17世紀前半における加賀藩前田家と八丈島宇喜多一類」

例によって宇喜多秀家についての話が多くなりそうです。

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【受贈御礼】頂いたもの・今年書いたもの

庭

今年もあと一週間を切りました。

この数日で頂いたものを紹介…。
いずれも実証的で堅実な研究成果です。ありがとうございました。では頂いた順に。

丸島和洋氏から、
『武田氏研究』50(2014年)
玉稿「戦国大名武田氏の佐久郡支配―内山城代小山田虎満・昌成を中心に―」(『信濃』66-12、2014年)
 〃「戦国大名武田氏の西上野支配と箕輪城代―内藤昌月宛「在城定書」の検討を中心に―」(『地方史研究』369、2014年)
 〃「武田氏から見た今川氏の外交」(『静岡県地域史研究』5、2015年)
 〃「武田家臣「三郎殿」考」(『年報三田中世史研究』21、2014年)
 〃「北条・徳川間外交の意思伝達構造」(『国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇』11、2015年)


萩原大輔氏から、
玉稿「前田利長隠居政治の構造と展開」(『富山史壇』178、2015年)

丸島さんの精力的な活動には頭が下がります。東国の戦国史についてはまったくもって疎いのですが、豊臣政権期につながる取次論や、史料批判の方法など、自分の興味に引きつけて拝読しました。
また、註釈を眺めるだけでも、いかに東国を舞台にした議論が盛んであるかがよくわかります。
前回の記事に書いた通り、つい先日金沢の研究会で、ざっくりとした研究史整理をしたのですが、西国……さらにそのなかの岡山県地域との違いは(それが良い悪いではなく)歴然としているように思います。
加えて、戦国遺文の刊行状況や『武田氏研究』等での増補(補遺)に鑑みれば、研究環境にも大きな開きがあることは間違いありません。

萩原さんのお仕事は、先週北陸地域の新聞には記事が出たように、
恐らくもっとも年代が古いであろう前田利常(利光)発給文書(の写し)の提示など、
有益な史料紹介も含めた丹念なものです。
仕事柄この時期(慶長年間)の前田家権力については、私もいろいろ考えなくてはいけないので、先行研究での到達点や、利長・利常の動向といった基礎・基本的な情報を色々と知ることができました。
なお、萩原さんの結論は、慶長10年以後16年までの前田家権力は、家督は利常にあるが、実権は隠居の利長にあった、というもので、現時点では私も妥当な結論のように感じました。

※12/29追記
馬部隆弘さんから玉稿「大名領国における公的城郭の形成と展開―「城督」を手がかりに―」(斎藤慎一編『城館と中世史料―機能論の探求―』高志書院、2015年)をいただきました。
上記のお仕事と同様、実証の手順、研究史の踏まえ方や、史料への目配りなどにつき色々と勉強になります。
なお、「城督」は戦国期大内・大友・毛利領国に限定される用語だそうです。

****

と、こんな具合に、来年も勉強を続けていきたいと思います。
2月はじめには金沢で講演の予定(テーマはいつもの通りです)ですので、とりあえずはその準備です。

なお、私が今年一年で書いたものは以下の通りです。相変わらずのテーマ設定です。

拙著『宇喜多秀家と明石掃部』岩田書院、2015年5月 
 ……タイトル通りの内容。宇喜多氏の石高に関する通説の見直し(57万石は誤り)など
大石泰史編『全国国衆ガイド 戦国の"地元の殿様"たち』星海社新書、2015年8月
 ※「備前国」(明石氏・松田氏・浦上氏・宇喜多氏・穝所氏・伊賀氏)、
  「備中国」(三村氏・庄氏・石川氏・清水氏)の項を執筆
 
……宇喜多氏や浦上氏について、なるだけ最新の研究を盛り込んだうえで
   一般向けにわかりやすく…という、なかなか難しいお仕事でした。
   たとえば、宇喜多氏について、島村貫阿弥(観阿弥)や中山信正には敢えて触れておりません(※補足)
   なので、誰が言い出したのかわからない直家の綽名(梟雄?)等も当然出てきません。
拙稿「関ヶ原戦後の宇喜多秀家」『宇喜多家史談会会報』第55号、2015年7月
 ……拙著『宇喜多秀家と明石掃部』所収「宇喜多秀家の処分をめぐって」などを平易に書き直したもの。
拙稿「金沢の樹正院屋敷地について」『宇喜多家史談会会報』第56号、2015年10月
 ……金沢での樹正院豪姫の屋敷地の通説は「西丁(西町)」(金沢市)ですが、はっきりこれを否定します。
拙著『論文集 宇喜多秀家の周辺』同刊行会、2015年12月
 ……樹正院豪姫や宇喜多秀隆(秀家嫡男)について、加賀藩関係の新出史料から考えます

※補足
 直家による島村貫阿弥への「仇討」や、「岳父」中山信正の殺害伝承は、
 それ自体、創作である可能性が濃厚であるか、確定できる事実が僅少に過ぎるため。
 限られた紙数(分量)の中で(近年の研究成果等を削ってまで)敢えてこうした「伝説」の類を
 取り上げる必要は個人的には見出せなかったため。

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今年も終わりです

嵯峨釈迦堂

今年も残すところ10日ばかりとなりました。
今年はまだ一度も雪かきしてません。明日も雨のようで、雪が降りません。

昨日は金沢で研究会がありました。
中近世移行期の「国家」・「公儀」・「家中」・「国衆」……
種々さまざまなご意見(ご教示)あり、
自説を整理・再考するよい機会をいただきました。

来年も引き続き、地道に思索を深めていければと思います。

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プロフィール

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戦国・織豊期を中心に、あれこれ考えています。
単著『論文集宇喜多秀家の周辺』(同刊行会)・『宇喜多秀家と明石掃部』・『「大老」宇喜多秀家とその家臣団』・『豊臣期の宇喜多氏と宇喜多秀家』(以上、岩田書院)・『明石掃部の研究』(同刊行会)、編著『備前宇喜多氏』(「論集戦国大名と国衆⑪」岩田書院)など。

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