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三鬼清一郎氏「山本博文著『天下人の一級史料』に接して」

相変わらずの酷暑、いかがお過ごしでしょうか?
本日、下記の文章に接しました。
少しだけ紹介させていただき、あわせて私の印象も付記したいと思います。

三鬼清一郎氏「山本博文著『天下人の一級史料』に接して」       
       (『歴史学研究』№870<2010年9月号>)

この文章は、
山本博文氏の著作『天下人の一級史料―秀吉文書の真実』(柏書房、2009年)について、
三鬼氏が検討・批判を加えたものです。

なお、この山本氏の著作は、私自身も昨年購入して手元においております。
豊富な図版に加えて、平易な文体で書かれており、これは有益だと何度も読み返しましたが、
今回、三鬼氏の文章に接して、随分と多くの事柄を見落としていたことにまずは反省しきりです。

さて、
個別の検討事項の是非については、私には判断がつきかねる部分もありましたが、
大方の議論について、三鬼氏の見解にはうなずかれるものがありました。
一々の議論の紹介は差し控えますが、
関心の向きは直接ご確認いただければと思います。

また(本題を外れますが)「おわりに」に記された下記の内容には、
個人的に強い共感を覚えずにはいられませんでした。

山本氏が使用した「一級史料」という言葉に違和感を覚える三鬼氏は、
次のように述べておられます。

--------------------------------------------------------
いかなる史料にも固有の価値があるはずで、何を基準として
等級づけが可能かが理解できない。
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この点、私自身に引き寄せていえば、
たとえば、宇喜多氏を論ずるにあたって、
『備前軍記』といった軍記物の記載を、多くの場合は退け、
その代わりに同時代史料あるいは『戸川家譜』といった比較的良質の編纂物を
とることが少なくありません。
しかし、この例でいえば、『備前軍記』には『備前軍記』の価値を認め、
その記述を起点にした議論も不可能ではないはずなのです。

上述の三鬼氏の言葉を重く受け止めて、より多様な、もっと広い視野をもって
先人の残した資・史料を検していく必要性を痛感させられます。


次いで、三鬼氏は、山本氏の著作に対する検討をはなれて、
下記のような苦言も呈されます。
この稿を通じて三鬼氏の訴えたかった事柄が凝縮されているやに思われます。

--------------------------------------------------------
昨今の歴史学会には、克服すべき課題が山積している。
とりわけ若手・中堅研究者の一部にみられる業績万能主義・モラルの
低下は目に余るが、それを糺して自ら範を示すべき立場にある研究者
の姿勢にこそ問題があるのではないか。
--------------------------------------------------------

「業績万能主義・モラルの低下」……
モラルの低下については具体的にどのようなことを指すのかは明らかではありませんが、
多少、意訳するとすれば、
質より量、何でも(先に)書けばよい、そういった傾向のことを指すのでしょうか。

あるいは
地元の研究者が何十年もの歳月をかけた地道な努力(研究)に対して、
中央の研究者が「史料の扱い方に問題がある」といった言辞で一蹴してしまう、
または無視・黙殺をもって相対する。……そういった事柄も該当するのかもしれません※。

※三鬼氏による上述の検討には、「直江状」を取り上げるに際して、山本氏が
 「地元越後や米沢在住の研究者の業績や『歴代古案』などの良質の史料も無視している」
 といった指摘もありました。

いずれにせよ「どんなものであれ(沢山)成果を出せばよい」、
「多少議論があらくても、質より量だ」といった誤った傾向が広がっているとすれば、
何とも遺憾なことだと思いますし、私自身も与しません。
むろん、独善的な「史料の等級づけ」があるとすれば、
それに対しても強い違和感を覚えます。

じっさい、
私自身も最近、先行研究の軽視・無視が見られたり、編纂物の利用を
何らの理由を示さず一蹴した研究者の著作について疑問を呈しました※。

拙稿「宇喜多騒動をめぐって―光成準治著『関ヶ原前夜』第五章への反論―」
  (『日本史研究』第573号、2010年)

以上、乱文のうえに、好き勝手に放言いたしましたが、
何とぞご海容いただければと思います。

三鬼氏の提言を、真摯かつ誠実にうけとめ、自戒とすると同時に、
今後の研究の一つの指針として、地道に精進を続けたいと思います。

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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戦国・織豊期を中心に、あれこれ考えています。
単著『論集加賀藩前田家と八丈島宇喜多一類』(桂書房)、『宇喜多秀家』(戎光祥出版。シリーズ実像に迫る13)、『論文集宇喜多秀家の周辺』(同刊行会)・『宇喜多秀家と明石掃部』・『「大老」宇喜多秀家とその家臣団』・『豊臣期の宇喜多氏と宇喜多秀家』(以上、岩田書院)・『明石掃部の研究』(同刊行会)、編著『備前宇喜多氏』(「論集戦国大名と国衆⑪」岩田書院)、『前田利家・利長』(戎光祥出版)など。

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